KODAMA -木霊-
ALCEST (アルセスト)
DISK UNION
2016-10-19



1.Kodama
2.Eclosion
3.Je suis d'ailleurs
4.Untouched
5.Oiseaux de proie
6.Onyx


フランスのポストロック/メタルの5枚目。
個人的に今年の目玉の一つだったAlcestの新譜です。
事前情報通り、前作の完全ポストロック路線から再度、
ポストブラックメタルへの揺り戻しが 感じられる内容となっております。

思えば前作「shelter」は相当にキャッチーで、Alcestの光の面をこれでもかと打ち出し、
Popとすら呼べるほどの「Neigeのリア充」感が作品の端々からほとばしるあまり、
根暗メタラー達があまりの眩しさに裸足で逃げ出すほどだったと記憶しています。
個人的には曲そのものの出来はAlcestのカタログ中では屈指の充実度で、
それを完全再現して見せた来日公演もとても良い内容だったので高評価でした。

ただ、やはりメタラー諸氏にとってのAlcestの頂点は
2nd「 Écailles de Lune」なのではないでしょうか。
1stの衝撃ももちろん強烈でしたが、ポストブラックメタルとしてのAlcestは2ndであり、
未だ誰も到達し得ない前人未到の高みへ足を踏み入れた金字塔的作品と、
現在でも非常に高く評価されているのも納得の名作でした。

ようやく本作「Kodama」に話が移りますが、
各所で名盤2ndに近い作風と賛辞を得ている本作、
哀愁のトレモロリフの上でNeigeがデス声で吠え、2ビート/2バスでドラムが走る、
その瞬間にカタルシスを覚えるリスナーも多いでしょう。
しかし本作はそこが焦点ではありません。

タイトルからもわかる通り、ジブリ映画「もののけ姫」からインスパイアされた作品で、
深き樹海の深淵なる神秘さ、壮大さを表現した作品であることは一聴してわかりますが、
それ以上に、今まで以上に隙間だらけの空間を効果的に利用する、詫び寂びの精神、
その美しさをNeigeはもののけ姫(あるいは日本と言い換えてもよいかもしれません)
からインスパイアされたのだと私は思います。

メロディは相変わらず冴えているものの、
正直曲単位での一聴した衝撃は前作にも及ばず、
曲自体も長めで展開も多く、歌も少ないし、雰囲気重視の作品ですが、
特に今作で素晴らしいのはWinterhalter氏のドラムです。
来日公演でも上手いドラマーだなあとは思いましたが、
ここで聴けるメリハリの効いたプレイ、タメの効いたプレイには仰天しました。
ドラムアレンジも秀逸で、これまでのAlcestのカタログでは最もドラムが印象的です。
もはや本作の主役はWinterhalter氏と言ってしまいたいくらい。

曲の終わり方が唐突だったり、
ノイジーなインストを最後に持ってきてリピートを誘う構成から見ても
曲単位ではなくアルバム一枚で1つの作品とみてほしい意図は伺えますが、
やはり白眉はタイトルトラックの1.Kodamaでしょう。
もののけ姫感が出ているかといわれると微妙ですが、
本作で打ち出されたカラーがよく出ているのはこの曲と思います。

初聴時は、どこがもののけ姫やねん、ちょっと森感あるだけやん、
もののけ姫(久石譲)なめんなよとか思ってしまったのは内緒ですが、
(私は月1回もののけ姫みるくらいのファンです)
日本大好きなんだなと解釈するととても愉しめました。笑

この深淵な世界観を、Liveでどのように表現するのか、
そう遠くないであろう再来日公演まで、
このアルバムを聴きながら首を長くして愉しみに待つことにします。