Shrines of Paralysis
Ulcerate
Relapse
2016-10-28


1.Abrogation
2.Yield to Naught
3.There Are No Saviours
4.Shrines of Paralysis
6.Chasm of Fire
7.Extinguished Light
8.End the Hope

ニュージーランドのテクニカルデスメタルの5枚目。
不協和音デスメタルの王者(と私は勝手に呼んでいます)による
2016年の最強暗黒メタルといえる会心作です。

これまでも他大勢のデスメタルとは一線を画す、
灼熱の暗黒デスメタルを繰り広げておりましたが、
本作では謎のキャッチーさとメロディアス感(?)を手に入れて更に深化しており、
これまで以上にファンを拡大することは必至と思われます。 
トレードマークの不協和音リフは更にに印象的なフレーズを連発するようになり、
もはやこの手のリフの巧みさではパイオニアであるDeathspell Omegaをも
超えてしまっているのではないかと思える程です。
音楽性からしてキャッチーという表現は正しくないように思いますが、
メロディも増量されているのもあり、これまでで最も聴きやすいという面を持ちながら、
演奏陣の苛烈さは落ちておらず、
暗黒性とキャッチーさを高次元で両立させた作品になっているように思います。

今作では1曲の中の緩急・ドラマティックさも格段に上がっており、
ドゥーミィーなパート増量、そこからの落とし込み方、
燃え盛る業火のようなデスメタルパートへの引き戻し方もより劇的になっており、
非常にドラマティックです。

過去作でも悲哀・憤怒をこれでもかと表現してきたUlcerateですが
今作では特に悲壮感が際立っており、この点も一役買っています。
キャッチーなメロディなんて微塵もないのに強烈な扇情感が曲に宿っており、
この辺りも過去作との違いではないでしょうか。

前述の通り緩急がついた曲が多く、
この手のバンドにしては各曲の差別化もできており、
今までに比べればバラエティに富んではいますが、
世界観や曲調はやはり一貫していて、
不協和音てんこ盛りの暗黒デスメタルなので、
方向性がぶれているわけではないです。

終盤3曲が特に今作で際立っており、
 6.Chasm of Fireはドゥーミィーなパートとデスメタルパートとの対比が
最も際立った曲の一つと思いますが、 
7.Extinguished Lightの持つドラマティカルな悲壮感などは
ちょっと比肩する対象が見当たらない程凄いですし
8.End the Hopeではメロディアスともいえるリフも垣間見えます。

キャッチーとかメロディアス言ってますが、
基本不協和音てんこ盛りのテクニカルデスメタルなので、
その辺りはご了承ください。
ともかく、今年を代表する暗黒デスメタルですので
ご興味ある方は↓の動画で試聴していただければ幸いです。

個人的にはデスメタルの新境地に足を踏み入れた感のある、
名作と評価したい一枚。