ハンド・キャンノット・イレース
スティーヴン・ウィルソン
ビクターエンタテインメント
2015-02-25



1. First Regret
2. 3 Years Older
3. Hand Cannot Erase
4. Perfect Life
5. Routine
6. Home Invasion
7. Regret #9
8. Transience
9. Ancestral
10. Happy Returns
11. Ascendant Here On
12. Perfect Life (Ground Union Mix)(日本盤ボーナストラック)

イギリスのポストプログレ4枚目。
今更私がここでレビューしなくてもネット上で深い洞察のレビューが
多数上がってるので、そっちを見て頂いた方が建設的かと思いますが、
これがもうほんとに凄くてですね、
もうこれは今年No.1かもしれんなあと素直に思います。

前作でも各メンバーのポテンシャルの高さをこれでもかと叩きつけ、
ジャジーでインプロっぽさもありながら、緻密な構築美とインテリな作風で
プログレファンを唸らすかなりの傑作でしたが、
今作はPorcupine Treeでの活動歴すら総括して、
これまでのキャリアで積み上げてきたものをすべて詰め込んだ作品になっています。

暗く重厚なコンセプトに反して作風はドリーミィでポジティブなフィーリングが
作品全体に漂っており、座して作品に向かわずとも
スッと耳に入ってくる、耳触りの良い作品になっているのがとにかく凄い。
勿論じっくり歌詞を追いながら作品に向き合ってのリスニングもお勧め出来、
耳から入ってくる音から広がる情景に思いを馳せながら
世界観にどっぷり浸ることも出来るし、
聴けば聞くほど新たな面を発見できる深みも持ち合わせています。
今作はこういったプログレファン、Post-Alternativeファンのどちらをも唸らす、
ある意味キャッチーともいえる面が非常に素晴らしい。

10分以上の曲も複数配置し、しかもコンセプトアルバムながら、
このような質感をもつ作品は少ないです。
前作も凄かったのですが少しインスト部分が多すぎて、
Post-Alternative大好きな私としてはちょっと違うなあと言う感想だったのですが、
今作はメロディ、歌、インスト、世界観どれをとっても完璧で、
じっくり聴き込めば本当にお腹いっぱいになれるし、
さらっと流して聴いていてもゾクッとする瞬間が何度もあったりして、
どんな聴き方をしても凄くいい。

私はプログレはお世辞にも語れるほど聴いてきたわけではなくて、
メロディ以外のところでゾクッとするなんてこれまであまり経験がなく、
再三のプログレ常套文句である、
「プログレは難解」
これを高校の頃からいまだにどこか引きずっていたのですが、
今作は本当に聴き易くて、初めて触れる方にもオススメできます。

そういった部分も含め今作は、
今年を代表する傑作であるだけでなく、
21世紀~を代表するPost-Progressiveの金字塔とされて然るべきと思います。
今年はこれを上回る完成度の作品はもう無いでしょう。
Steven Wilson先生参りました。
本当にぐうの音も出ません。